グランジは、静かな公園のような場所を1人ゆっくりと歩いていた。第一演習場。またの名を旧狩猟場は、かつての王家の狩猟場として開拓され、そのままの自然が残されている場所でもある。 そこには管理用の建物もあれば、舗装された道続きを読む
カテゴリー: 本編
第三十四話:異国の武器
駅前へ向かうタクシーの中で、キリヤナギはデバイスの時計を確認しながら焦っていた。もう10分も掛からず駅へと着くはずだが、駅前は信号や自動車の通りが多く、思うより早くは進まない。しかし、ここから走ってもまだ自動車の方が早続きを読む
第三十三話:マグノリアの盾
そこは静かな演習場だった。 足元には草地が広がり、多くの無人の建物があるそこは、空がひらけていても視界はそこまでよくはなく、騎士達は建物沿いに身を隠しながら索敵を行う。 オウカの東側、川沿いの領地より訪れたマグノリア騎続きを読む
第三十二話:前夜の歓迎会
「ご機嫌よう、王子。応じて頂き感謝します」「先輩。こんにちは、こちらこそ来てくれてありがとう」 王宮の一室でフォーマルな私服で現れたアレックス・マグノリアは、キリヤナギの着席を確認して自分も座る。 開会式の練習を終えた続きを読む
第三十一話:ガーデニアの魔術師
次の日、朝の通学路でキリヤナギは小さく欠伸を落とす。 テスト期間が終盤にはいったが、これが終わっても騎士大会の開会式と閉会式の練習が控えていて、ジンは王子が体調を崩さぬよう細心の注意を払えとセオへ五月蝿くいわれていた。続きを読む
第三十話:シラユキの穢れ
皆が平常の業務を終えつつある騎士棟でセシルは、終業間際に届けられた書類にため息をつく。 騎士大会・集団戦への参加を打診されたセシルだが、辞退できないかと言う要望書を委員会へ提出していたのだ。 代理推薦として例年通り「タ続きを読む
第二十九話:意義の変遷
空気が冷え込み、朝のニュースには気温の低下が放映され始めた頃。シズル・シラユキは、その日も平常通り出勤して朝礼へと望んだ。集まった騎士の同僚は同世代も多くいて、皆真剣に隊長の挨拶へ応じる。 その日は、午前から事務作業が続きを読む
第二十八話:忠義と裏切りの騎士
春の終わり、人々が夏の装いをしてゆく中で桜花の騎士達も皆、軽装となった騎士服へ身を包み、暖かくなる季節の変わり目を実感していた。 誰もがネクタイを緩め、常時水分補給が推奨され始めた騎士棟では、王宮に仕える騎士達が生活し続きを読む
第二十七話:変わらぬ心
『マジか? 王子これんの?』「うん、でもちょっと道が混んでて、時間稼ぎできないかな?」『できるかわかんねーけど……』 後部座席からヴァルサスへと音声通信を繋いだキリヤナギは、学院へ向かっていると言う旨と続きを読む
第二十六話:貴族の立場
そんな穏やかな日々はすぎ、週末にキリヤナギは久しぶりに洋装へ着替える。 一般に紛れ込めるよう服を選んでもらったが、ククリールと2人だけというデートへそれなりに緊張していた。 「殿下似合ってる!」「リュウド続きを読む