いかなる場所、いかなる時代であろうとそこに人がいる以上は変わらない営みがある。 食事、睡眠、労働、交友、争い、離別、依存、自立。 これを読んでいるあなたが知らない世界があり、そこには桜花国という国がある。国があれば続きを読む
カテゴリー: 外伝
初恋のおわりのうた 第一話 ─届かないから美しい─
〈学院・カフェ 昼〉 待ち人来たらず。 昼時のカフェテリアの騒々しさの中でテーブル席に座り、向かいの空席を静かに睨みつける男が一人。 指定の待ち合わせの時間はとうに過ぎて、眼前に置かれた紙カップの中身は冷め切っ続きを読む
初恋のおわりのうた 第二話 ─あたしの息を止めて─
〈オウカ町郊外 商店街にある喫茶店 夜〉 暖色の光と穏やかな音楽、そしていくつかの、他の席からは内容が聞き取れない程度の声量で行われる歓談の声。夜の喫茶店内を包む憩いを絵にかいたようなそれら要素は、テーブル席に一人続きを読む
初恋のおわりのうた 第三話 ─笑ってよ、君のために 笑ってよ、僕のために─
〈学院・カフェ 夕方〉 向かいの空席を睨んでいる。 営業が終わり、照明の落とされた学院のカフェにはテーブル席に座るアステガ以外に人影はない。 季節は移り、高い空と肌寒さが人々に寂寥を感じさせる秋。 夏季休講を続きを読む
初恋のおわりのうた 第四話 ─それは私の恋が終わった日─
〈電車 夜〉 車窓の黒を高速で走る光たちを無心で眺めている。レールの上を走る車輪の振動と音が足元から疲れた脳まで伝わってくる。 文化祭の前日の夜。合わせの練習を終えて帰りの電車に揺られながらアステガは、終ぞこの日続きを読む
初恋のおわりのうた アウトロ ─溜めこんだ涙が腐ってしまう前に─
〈オウカ町郊外 駅前 朝〉 待ち人来たりて、 「よ」 「おう」 軽く挨拶を交わした後、アステガとユリアは待ち合わせ場所である駅入り口から商店街に向かって歩き出す。 オウカ町郊外の空は晴れ。穏やかな午前の日差しと秋続きを読む
初恋のおわりのうた EXTRA ─誰のせい?─
〈学院・講義棟 昼〉 文化祭が終わって数日経った昼の事。 午前最後の講義を終えて、室外に出たら廊下に見知った顔がいた。 「やあマグノリアさん。先日はどうも」 「待ち伏せとは趣味が悪いな、スターチス」 視線と態度続きを読む